会社設立関係
1 会社設立のメリット・デメリット
会社法が施行されたことにより、株式会社の資本金が1円でよい、取締役が1人でよい、などの制度の簡略化がされ、手軽に株式会社を設立することができるようになりました。しかし、簡単に会社を設立することはできますが、会社を設立した後、会社を維持していくためには、費用もかかりますし、税務や法律の知識も必要となります。
会社を設立する前に、会社設立によってどのようなメリットとデメリットがあるのかを、しっかりと把握しておく必要があります。
<会計・税務面のメリット>
個人事業の場合には、プライベートで使ったお金(家事関連費)と事業活動のために使ったお金(経費)とを分ける必要がありますが、株式会社の場合、その活動は所有者である株主のために利益を得ることを目的としたものであり、それ以外の活動はありません。このため、会社の経費は原則として、すべて事業活動のために支出されたものとみなされ、経費の範囲も自ずと広がってきます。
具体的には、以下のようなものがあげられます。
1、 生命保険を経費にできる
2、 退職金を経費にできる
3、 規程化することで出張手当(日当)も経費にできる
注:一定の要件や相当の金額などの制約はあります
また、税務面では、次のような違いがあります。
1、 社長の給料(役員報酬)の一定割合を概算経費として控除できる(給与所得控除)
2、 減価償却費の計上が任意にできる
3、 資本金1000万円未満(1000万円ではダメです)であれば2年間消費税が免除される
4、 赤字を繰越控除できる期間が7年間(個人の場合は3年間)
<経営面のメリット>
1、 社会的信用が大きくなる
2、 決算日を自由に設定できる
3、 助成金の幅が増える
4、 人材を確保しやすい
5、 事業承継しやすい
<会計・税務面のデメリット>
1、 設立費用がかかる
2、 赤字でも法人住民税(均等割)は課される
3、 社会保険料が増える
4、 交際費の一部が経費とならない
5、 法人成りにより経費がかかる(はんこ、名刺、看板、ホームページ等の変更費用、場合によっては税理士等の顧問料など)
<経営面のデメリット>
1、 設立・開業手続きが面倒
2、 正規の帳簿が必要となる
3、 会社法等の法的規制が厳しく、いろいろと義務付けられている
必ずしも会社設立を勧めるものではありません、会社設立のメリット・デメリットを把握したうえで、ご検討いただければと思います。
2 会社設立・開業までの流れ
会社を設立・開業するためには、大まかに以下のような流れに沿って行います。
1 会社の重要事項の決定
会社の種類(株式会社、合同会社(LLC)、合資会社、合名会社)、商号、取締役等役員、代表取締役、出資額、本店の住所、目的など会社の重要事項を決めます。
2 定款の作成と認証手続
1で決めました会社の重要事項をもとに、会社における憲法のようなものである「定款」を作成します。この定款を公証人役場に持って行き、公証人の認証を受ける必要があります。
※インターネットを利用しての定款の認証も可能です(電子認証制度)。
3 出資金の払込み
設立メンバーだけが出資する場合(発起設立)、設立メンバー1個人の名義口座に設立メンバーが振り込みを行います。 会社法施行前は、金融機関から払込みがあった旨の証明書が必要でしたが、発起設立の場合は、振込みがなされた口座の通帳の写しでも可能となりました。
4 登記申請書の作成と登記
登記所である法務局の登記申請窓口に、登記申請書及び添付書類一式を提出し、登記を申請します。この登記申請日が、会社設立日となります。
5 諸官庁への届出
4の手続きにより会社が設立されますが、その設立を知らしめるべく税務署をはじめとする各役所に届け出る必要があります。
詳細な届出書類については、4.会社設立後の届出をご参照ください。
会社を設立・開業しても、本業のほかにも経理・税務面でたくさんやらなければならないことがあります。 例えば、「帳簿の付け方はどうしたらいいのか?」「パソコンソフトは何がいいのか?」 「消費税の計算方法は2種類あるみたいだけど、どちらを選べばよいのか?」「源泉所得税の納付はいつなのか?」「年末調整のやり方わからない?」など、
このように、たくさんの手続きが必要となります。直前になってバタバタしないように、ご注意ください。
3 決算期の決め方
決算期を決めるためには、いろいろな観点から検討する必要があります。
1、 節税の観点
2、 資金繰りの観点
3、 業務負荷の観点 などです。
1 節税の観点
利益のもっとも上がる月を事業年度の最初の月になるように決算期を決めます。
期初に上がった利益は1年間かけて事業に投資できるため、節税になります。また、期初に上がった利益で買った固定資産の減価償却費も1年分を計上できます。逆に、期初に予想よりも利益が上がらなくても、1年間かけて経費削減し、赤字を回避することができます。
利益が上がる月を期末にすると、期末で上がった利益は節税をする時間的な余裕がありません。期末で上がった利益で購入した固定資産の減価償却費は1ヶ月分しか計上できません。予測よりも利益が上がらなかった場合、赤字決算になってしまいます。
2 資金繰りの観点
多額の支出が見込まれるタイミングをはずすように、決算期を決めます。
基本的に決算日後2ヶ月以内に法人税等の納税をする必要がありますが、そのタイミングで、賞与の支払いや借入金の返済が重なってしまった場合、資金繰りはかなり厳しくなってしまいます。
手許資金で賄えない場合は、どこからか資金を調達しなければなりません。ですから、多額の支出が見込まれているタイミングに、決算に係る納税が重ならないように決算期を設定することも考える必要があります。
3 業務負荷の観点
決算期は本業が忙しくない時期に設定します。
決算日前後には、決算作業や棚卸等、特別な業務が生じるため、業務負荷が高まります。そのため、本業が忙しい時期に決算を迎えてしまうと、本業が忙しいのに、決算作業も行わなければならないということになってしまいます。
また、決算日には原則として、実際に在庫を数える棚卸という作業を行う必要がありますので、在庫数量に季節変動がある場合には、在庫の数が少ない時期に決算期を設定すると、棚卸も楽になります。
上記の観点及び会社の諸事情を勘案して、決算期を決める必要があります。
4 会社設立後の届出
会社設立により会社が生まれますが、人間の子供が生まれたあとに役所等に届け出るように、会社の場合も届け出が必要となります。ただ、会社の場合は、人間と違い実態がなく、また雇用を生む場としての機能等があるため、以下のように多くの届け出が必要となります。 なお、これだけがすべてではなく、添付資料が必要な届出もありますので、事前に関係各所にお問合せしてご確認ください。
<税金関係>
提出先 | 提出書類 | 提出期限等 |
---|---|---|
税務署 | 法人設立届出書 会社 | 設立日から2ヶ月以内 |
給与支払事務所等の開設届出書 | 会社設立日から1ヶ月以内 | |
青色申告の承認申請書 |
会社設立日から3ヶ月を経過した日と、当該事業年度終了日のいずれか早い日の前日まで ※提出は任意ですが、提出することによりメリットがありますので、必ず提出しましょう |
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源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書(兼納期の特例適用者に係る納期限の特例に関する届出書) |
原則、適用したい支給月の前月末日 ※提出は任意です |
|
棚卸資産の評価方法の届出書 |
第1期の確定申告書の提出期限(事業年度終了の日から2ヶ月後) ※提出は任意、未提出の場合は、法定の評価方法・償却方法が適用 |
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減価償却資産の償却方法の届出書 | ||
都道府県税事務所 |
法人設立届出書 (福岡県の場合:法人設立(設置)届) |
福岡県:会社設立日から15日以内 ※都道府県により異なりますので、ご注意ください |
市区町村 役場 |
法人設立届出書 (福岡市の場合:法人等の設立申告書) |
福岡市:会社設立日から10日以内 ※市町村により異なりますので、ご注意ください |
<社会保険関係>
提出先 | 提出書類 | 提出期限等 |
---|---|---|
社会保険事務所 | 健康保険・厚生年金保険新規適用届 | 原則、会社設立日から5日以内 |
健康保険・厚生年金保険 被保険者 資格取得届 | 被保険者の資格取得日から5日以内 | |
健康保険被扶養者(異動)届 | 事由の発生から5日以内 | |
労働基準監督署 | 保険関係成立届 | 従業員を雇用した日の翌日から10日以内 |
労働保険概算保険料申告書 | 従業員を雇用した日の翌日から50日以内 | |
ハローワーク (公共職業安定所) |
雇用保険適用事業所設置届 | 適用事業所に該当することとなった日の翌日から10日以内 |
雇用保険被保険者取得届 | 被保険者となった日の属する月の翌月10日まで |
5 会社にかかる税金
税金と一口に言っても、たくさんの種類があります。会社に関係のある税金について、どのような税金があるのか主なものをあげてみました。
(1) 決算に関する税金
税目 | 申告・納付先 | 概要 |
---|---|---|
法人税 | 国(税務署) | 事業年度単位の所得(儲け)に対する税金 |
事業税 | 都道府県 | |
都道府県民税 | 都道府県 | |
市町村民税 | 市町村 | |
消費税 | 国(税務署) |
物やサービスなどの消費に対して課せられる税金。 5%のうち4%が国税、1%が地方税 |
(2) 資産にかかる税金
税目 | 申告・納付先 | 概要 |
---|---|---|
不動産取得税 | 都道府県 | 不動産を取得した時にかかる税金 |
固定資産税 (償却資産税) |
市町村 | 1月1日現在、保有する固定資産に対する税金 |
自動車税 | 都道府県 | 自動車の所有者に課される税金 |
(3) その他
税目 | 申告・納付先 | 概要 |
---|---|---|
源泉所得税 | 国(税務署) | 個人の給与等について、所得者に代わって支払者(会社)が徴収して納付 |
印紙税 | 国(税務署) | 契約書、受取書など税法に定められた文書を作成した時にかかる税金 |
登録免許税 | 国(税務署) | 不動産、会社の登記、登録、特許などを行う時にかかる税金 |
事業所税 | 市町村 | 指定都市などに所在する一定規模以上の事務所・事業所に課される税金 |
都市計画税 | 市町村 | 市街化区域内に所在する土地・家屋に対して課される税金 |
6 年間スケジュール
会社を作ると、毎年一定の時期に、税金や社会保険に関連した手続きを行っていく必要があります。
主なものは以下のようなスケジュールになっております。
会社の年間スケジュール | |
---|---|
法人税等の申告・納付 | 原則、決算日後2ヶ月以内 |
消費税等の申告・納付 | 決算日後2ヶ月以内 |
法人税等の中間納付 | 中間期末後2ヶ月以内 |
労災保険・雇用保険料の申告・納付 | 7月10日 |
健康保険・厚生年金保険の被保険者報酬月額算定基礎届 | 7月10日 |
健康保険・厚生年金保険料の納付 | 毎月末日 |
源泉所得税及び住民税の納付 |
原則、毎月10日 特例納付の場合には7月10日、1月20日 |
従業員給料の年末調整 | 12月(原則、最終の給与支払前まで) |
源泉徴収票等の法定調書の作成・提出等 | 1月末日 |
償却資産税申告書の提出 | 1月末日 |
個人事業主として、従業員を雇わずに事業を行っている場合にはほとんど必要なかった手続きも、法人化したとたんにこれだけ多く行わなければなりません。
税務関係の年間スケジュールを頭に入れて、余裕をもった早めの対応により、提出等の期限を守れるようにしてください。
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